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葉酸400μgに含まれるモノマー型とポリマー型の葉酸分子の数を計算
ポリマー型の葉酸(重合度n=7として計算)とモノマー型(重合度n=1として計算)の葉酸で、400 μg(= 0.400 mg = 0.000400 g)の中に含まれる分子の数を試算してみました。
葉酸の分子量と個数を求めてみましょう
有機化合物は分子として存在しています。葉酸は有機化合物ですので、分子として存在しています。つまり、葉酸の分子量(=原子量の合計)を求めて、それにグラムを付けた時、初めて天秤で量れる重さになるし、数がわかります。
分子量にgを付けた集団は1モルと定義されています。そこに含まれる分子の数はどんな分子でも6.02×1023個と決まっているのです。すべての分子について共通の考え方です(食塩は組成式NaClで分子ではなく、結晶格子を形成しているのはNa+とCl-というイオンなのですが、モルの考え方は同じです)。これを基準にして、いろいろな質量の有機化合物の分子数を比例計算できます。
有機分子には分子量という概念があります。それではn=1〜7の葉酸の分子量を求めてみましょう。分子量には単位がありませんが、モル質量にはg/molという単位があります。
n=1の場合:C19H19N7O6=12.01×19+1.008×19+14.01×7+16.00×6=441.4
n=2の場合:C24H26N8O9=12.01×24+1.008×26+14.01×8+16.00×9=570.5
n=3の場合:C29H33N9O12=12.01×29+1.008×33+14.01×9+16.00×12=699.6
n=4の場合:C34H40N10O15=12.01×34+1.008×40+14.01×10+16.00×15=828.8
n=5の場合:C39H47N11O18=12.01×39+1.008×47+14.01×11+16.00×18=957.9
n=6の場合:C44H54N12O21=12.01×44+1.008×54+14.01×12+16.00×21=1087.0
n=7の場合:C49H61N13O24=12.01×49+1.008×61+14.01×13+16.00×24=1216.1
次に、同じ400μgあったとして、分子は何個入っているか計算してみましょう。
400μg=0.400 mg=0.000400 gです。
n=1の場合について計算してみましょう。
分子量はモル質量と同じ数値です。分子量441.4はモル質量441.4 g/molでもあります。ということは、0.000400 gを441.4 g/molで割れば、(0.000400 g)/(441.4 g/mol)=9.06×10-7 molとなります。1モルの中には6.02×1023個の分子が入っているので、9.06×10-7 mol中には9.06×10-7 mol × 6.02×1023個/mol=5.46×1017個=546000000000000000個の分子が含まれていることになります。
同様にn=2〜7について計算してみましょう。
n=2の場合、(0.000400 g)/(570.5 g/mol)=7.01×10-7 molとなります。1モルの中には6.02×1023個の分子が入っているので、7.01×10-7 mol中には7.01×10-7 mol × 6.02×1023個/mol=4.22×1017個=422000000000000000個。
n=3の場合、(0.000400 g)/(699.6 g/mol)=5.72×10-7 molとなります。1モルの中には6.02×1023個の分子が入っているので、5.72×10-7 mol中には5.72×10-7 mol × 6.02×1023個/mol=3.44×1017個=344000000000000000個。
n=4の場合、(0.000400 g)/(828.8 g/mol)=4.83×10-7 molとなります。1モルの中には6.02×1023個の分子が入っているので、4.83×10-7 mol中には4.83×10-7 mol × 6.02×1023個/mol=2.91×1017個=291000000000000000個。
n=5の場合、(0.000400 g)/(957.9 g/mol)=4.18×10-7 molとなります。1モルの中には6.02×1023個の分子が入っているので、4.18×10-7 mol中には4.18×10-7 mol × 6.02×1023個/mol=2.51×1017個=251000000000000000個。
n=6の場合、(0.000400 g)/(1087.0 g/mol)=3.68×10-7 molとなります。1モルの中には6.02×1023個の分子が入っているので、3.68×10-7 mol中には3.68×10-7 mol × 6.02×1023個/mol=2.22×1017個=222000000000000000個。
n=7の場合、(0.000400 g)/(1216.1 g/mol)=3.29×10-7 molとなります。1モルの中には6.02×1023個の分子が入っているので、3.29×10-7 mol中には3.29×10-7 mol × 6.02×1023個/mol=1.98×1017個=198000000000000000個。
上記のような数の分子が含まれていることになります。
これはあくまでも試算結果ですが、同じ400 μgでも、モノマー型(n=1)は例えばポリマー型(n=7)の2.76倍(=546000000000000000個/198000000000000000個)も分子が含まれていることになります。当然、分子量が小さい方が同じ質量当たり多くの分子が含まれることになります。当然ながら葉酸の働きを担う部分はプテロイル基と1個のグルタミン酸残基の部分ですので、経口摂取して腸内で切断された残りのグルタミン酸のオリゴマー部分(切れたあとのn=1〜6の部分)はその目的に関しては不要なわけです。そういう部分も含まれた400 μgなわけですから、同じ400 μgでもモノマー型葉酸の400 μgが最も多くの葉酸分子を含んでいることになります。体内での利用率もモノマー型はポリマー型より高いので、モノマー型は分子数も多く、吸収効率も高いということになります。
このような計算は一般の方々はなかなか考えない、またはやろうと思っても習っていないのでわからないと思いますが、化学をやっている者であればこのような計算は可能です。しかし、このような基本的で重要なことをなぜ広告サイトには書いてないのでしょうか。不思議でなりません。
それには2つの可能性があると思います。
1. 不都合なことはあえて書かない。(売った者が勝ち)
2. そういうことを本当に知らない。(でも人には勧める)
このどちらかでしょう。知らないということはある意味幸せです。でも、思う壷というのはちょっと悔しくないですか。私は悔しいです。だからこそ、もっと細かく化学の目で見たサイトが必要だと思います。参考にしてほしいと思います。
次は、この考え方をもとに、葉酸分子を最もたくさん含んでいるのはどれかについて考えてみたいと思います。
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