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葉酸(folic acid)を分子構造からみてサプリとしての機能を考察

葉酸

葉酸(folic acid)の名称は、foliage(一本の草木の葉っぱ全部, 群葉, 木の葉)から来ています。ホウレンソウの葉っぱから発見されたのに由来しています。別名はビタミンB9, ビタミンM, プテロイルグルタミン酸です。化学構造からみて、水に溶けやすいと判断できます。、folateとも記載されていますが、一般には酸の官能基がイオン化していたり、エステルになったら-ic acidのところが-ateになるので、folateの名称になります。葉酸の場合、2つのカルボキシル基が陰イオンになっている時、folate というのかもしれません。L-グルタミン酸残基が含まれているので、DL表示をRS表示にした時はL-グルタミン酸はS-グルタミン酸に相当します。よって、IUPAC名(正式名称)は(2S)-2-[(4-{[(2-amino-4-hydroxypteridin-6-yl)methyl]amino}phenyl)formamido]pentanedioic acidとなります。

「○○酸」といっても、一般にイメージする酸の構造とは違ったものもあります。普通は酸といえばアレニウスの定義では水素イオンH+を出すものと認識されています。塩化水素HCl, 硫酸H2SO4, 硝酸HNO3, リン酸H3PO4, 酢酸CH3COOH, 一般名でカルボン酸R-COOHやスルホン酸R-SO3Hなどです。しかし、たとえば尿酸は核酸塩基のプリン骨格で、イメージとはかなり違います。そこで、まずは私が個人的に興味を持っている(利用してみようと考えている)葉酸について見てみましょう。葉酸はL-グルタミン酸のカルボキシル基-COOHが2つ付いているので、「○○酸」という命名に違和感はありません。

葉酸分子は2-位にアミノ基-NH2、4-位に水酸基-OH、6-位にメチレン基-CH2-のついたプテリジンのメチレン部分と、p-アミノ安息香酸のアミノ基が繋がった化合物のカルボキシル基-COOHがL-グルタミン酸残基のα-アミノ基-NH2がペプチド結合で繋がった化合物です。プテロイル基というものがあるとすれば、その名称から推測すれば、葉酸分子からグルタミン酸残基の側鎖のNHまでを除いた残りの部分(プテリジンとパラアミノ安息鉱酸のセットの部分)となります。実際に「葉酸はN-ヘテロ環のプテリジンとp-アミノ安息香酸からなるプテロイル基、つまり 4-[((2-アミノ-4(3H)-オキソプテリジン-6-イル)メチル)アミノ]安息香酸に1〜7個の L-グルタミン酸が結合したプテロイル(ポリ)グルタミン酸」です。このように、命名法を理解していればある程度は正しく予想できます(ただし、万能ではないです!)。

ポリマー型の葉酸の分子構造

葉酸

このグルタミン酸残基の側鎖のカルボキシル基(γ-カルボキシル基)が2つ目のL-グルタミン酸のα-アミノ基-NH2との間でペプチド結合して繋がったものがグルタミン酸の二量体(ダイマー)(n = 2)となります。これが、n = 3(トリマー)、n = 4(テトラマー)、n = 5(ペンタマー)、n = 6(ヘキサマー)、n = 7(ヘプタマー)まであるといわれています。1〜7個の L-グルタミン酸が結合しているからです。このタイプの結合をしたグルタミン酸はγ-ポリグルタミン酸 (γ-PGA) です。γ-ポリグルタミン酸は納豆にも含まれています。あのネバネバ成分の主成分です(ただし、この場合は葉酸ではないのでプテロイル基は付いていません)。アミノ酸NH2-CH(R)-COOHがペプチド結合で数個繋がったオリゴマー、多数繋がったポリマーの中のアミノ酸部分(NHからCOまでの部分)をアミノ酸残基といいます。グルタミン酸残基の数が1個の場合がプテロイルモノグルタミン酸で、2個以上の場合がプテロイルポリグルタミン酸となるわけです。いずれにしてもプテロイルという用語は慣用名であると考えられます。

このことを踏まえて、サプリメントの説明書をよく見る必要があります。天然の葉酸はポリグルタミン酸型であり、モノグルタミン酸型葉酸に比べ、体内での吸収率は50%程度といわれています。

一般には、1個がモノマー、数個が繋がったものがオリゴマー(オリゴ糖とかテレビでもよく聞きます)、オリゴマーよりたくさん繋がったものをポリマーといいます。接頭語は、モノ、オリゴ、ポリです。葉酸の場合は特にグルタミン酸のオリゴマーという言い方はされていないようですね。オリゴマーなのですが、ポリマー型としてあるようです。ですので、グルタミン酸残基が1個の場合がモノマー型、ここでは2個以上がポリマー型と考えるべきだと思います。そして、モノマー型が体内での利用率が高いと言われています。

有機合成化学の観点から見てみると、酵素反応でも使わない限り、地道な合成はかなり面倒そうな気がします。少なくとも私の考える方法では、できないことはありませんがかなりの反応ステップを要すると思います。なので、コストもかかります。だからこそ、生体系はいとも簡単に合成してしまうのですごいんです。特に難しい点は、アミノ基(-NH2, >NH)やアルコール性水酸基(-OH)等の求核剤として作用する部位がたくさんあること、カルボキシル基も2つあることです。保護基を選択的に導入したり、選択的に脱保護できない限り、合成化学のプロでも簡単ではないです。また、合成時の溶媒として用いることができる有機溶媒も限られてきます。なぜならば、アミノ基とカルボキシル基を併せ持つ分子なので、分子内塩(inner salt)を形成しています。つまり、極性が高い塩の形なので、普通の有機溶媒には溶けないと思います。

しかし、だからこそ極性溶媒である水には溶けるのです。欠点でもあり利点でもあります。タウリンや、ビタミンCは水溶性の高い分子で、摂り過ぎても尿として排出されます。逆に、一度に摂り過ぎるともったいないです。無駄になる分子が多いからです。それに対して、疎水性(脂溶性)の化学物質は、体の中の脂肪に蓄積します。水に溶けないから、仕方なく油の中に入っていくというイメージです(Like dissolves likeと英語では言います。「似たものどうしは混ざり合う」、「似たものは似たものを溶かす」といったような意味です。「類は友を呼ぶ」に近いものがあります)。しかし、β-カロテンから合成されるビタミンAは脂溶性で、水溶性ではないので、過剰に摂取しても体内から出てきません。つまり、自分と同じ疎水性の強い脂肪の中に蓄積されてしまいます。その結果、人体にに悪影響を及ぼす危険性があり、撮り過ぎには十分注意する必要があります。



次は同じ含有量(例えば400 μg = 0.400 mg = 0.000400 g)でも含まれている分子の数はモノマータイプとポリマータイプで違ってくることを示したいと思います。



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