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酵素の機能〜酵素とビタミンとの関係〜

黒板女子

ヒトの酵素は3000種類あるといわれています。基本的に1種類の酵素は1種類の化学反応を触媒します。酵素はタンパク質です。酵素には、それ自体で触媒活性を示すものと、補酵素と結合して触媒活性を示すものがあります。補酵素はビタミンからつくられます。だから私たちは食べ物やサプリメントでビタミンを摂取しなければなりません。

タンパク質だけから構成される酵素

酵素

つまり、酵素は化学反応の種類と同じ数の種類があることになります。酵素によって化学反応を受ける物質を基質といいます。基質と酵素は鍵と鍵穴の関係にあるので、ある化学反応にはある1つの酵素しか機能しません。これを基質特異性といいます。つまり、酵素はとても選り好みが激しいのです。

タンパク質は20種類のα-アミノ酸がある特定の順序で決まった長さになるようにペプチド結合で繋がってできたものです。その設計図はDNA上にあります。なので、遺伝情報が狂うと、変なタンパク質ができるわけです。変なタンパク質は正常な化学反応を行うことができません。その理由は、ある特定の立体構造をとった時だけ触媒として機能するのに、アミノ酸配列が1ヶ所でも違うと、その特定の立体構造をもはやとれなくなり、結果として触媒活性を失っていることになります。

補酵素を必要としない酵素(つまり、そのタンパク質単独で触媒機能があるもの)の一例を示します。私たちの膵臓から分泌される消化酵素のα-キモトリプシンは、タンパク質の加水分解を行ってくれます。ベプチド結合を切ってくれるわけです。その酵素には触媒の三点セットであるN末端から数えて102番目のL-アスパラギン酸と、57番目のL-ヒスチジンと、195番目のL-セリンが触媒活性部位に集まるようになっていて、その疎水的なポケットの中にタンパク質の疎水的なアミノ酸残基が水から疎まれて追いやられてきます。そこにナイフが用意されていて、ペプチド結合が切断されるという仕組みです。例えばリシン残基とフェニルアラニン残基の間のペプチド結合を切ります。これが基質特異性です。

複合たんぱく質はホロ酵素(=アポ酵素+補因子)

酵素

補因子のうち、無機イオンなどは補因子、有機化合物は補酵素といいます。なので、ミネラルは無機物なので補酵素とは言いません。ビタミンは補酵素の前駆体(補酵素に変わる前の物質)です。そういう意味ではビタミンCは本当の意味のビタミンではありません。それ単独では触媒活性を持たないアポ酵素に補因子が結合すると、酵素としての機能を持つようになります。このアポ酵素と補因子が組み合わさった1セットをホロ酵素といいます。なので、私たちがサプリとして経口摂取する有機化合物のビタミンは補酵素として体内で働くわけです。酵素は1個で何回も繰り返し化学反応を触媒してくれます。だからこそ触媒なわけです。もし1回きりで仕事が終わるのであれば酵素とか触媒とは言いません(酵素は触媒機能を示すタンパク質です)。ということは、あとで補因子に変わるビタミンは酵素1個に対して1個でいいのでたくさんあってもしょうがないわけです。むしろ、余ると体に害があるわけです。これがビタミンは摂り過ぎるとよくないと言われる所以です。少量でよいわけです。しかし、水によく溶けるビタミンであれば、仮に摂りすぎても、余ったら尿として排出されます。だから摂りすぎても比較的害は少ないです。一方、水に溶けないか溶けにくい疎水性の、あるいは親油性のビタミンは肝臓や脂肪などの体内の油の性質の強い環境(疎水的な環境)に追いやられ、そこで取り込まれて蓄積します。水と油は混ざらないけれども、油と油は混ざります。つまり、類は友を呼ぶわけです。よって、疎水的なビタミンは過剰に摂取すると体に害があるわけです。このようなことを知った上でビタミンを選択したり、飲んだりしなければなりません。

ちなみに、酵素には至適pHや至適温度というものがあります。生卵を加熱して目玉焼きにしたらもはや生卵には戻りません。これをタンパク質の変性といいます。

市販のサプリメントの酵素の種類が多いのは、上記のような理由によります。それぞれの目的に応じた酵素を選ばなければなりません。1種類の酵素でたくさんの種類の化学反応を触媒するものは存在しません。つまり、万能の酵素は存在しません。そういうわけで、たくさんの種類が入った酵素ドリンクなどが市販されているようです。ところで皆さん、酵素は化学反応の触媒機能を有するタンパク質です。化学反応を担うから酵素というのですが、タンパク質にほかなりません。ということは、私達が酵素を食べたら、それはタンパク質ですから、タンパク質分解酵素(消化酵素)で分解されてアミノ酸になり体に吸収されます。つまり、酵素を経口摂取してそのまま酵素が体の中で働くということはありません!!!酵素を経口摂取しても効かないと思います!



次は、加齢臭は2-ノネナール〜渋柿タンニンと反応させて除去すれば臭いは除去できる?です。



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