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トップページ > サイエンス関連 > 寝癖とパーマの髪の違い

寝癖とパーマの髪の違いは水素結合と共有結合による架橋構造

髪の毛はケラチンというタンパク質でできています。タンパク質はα-アミノ酸がペプチド結合-CONH-で繋がった高分子です(ポリマーともいいます)。ケラチンには-S-S-結合を有するシスチン残基が多数含まれています。シスチンはタンパク質の分子鎖間の架橋点となっており、それによってタンパク質の立体構造を安定化しています。この架橋点は2つのシステイン残基の側鎖のチオールが酸化されてジスフィド結合となったものです。この部分を人為的に組み替えたものがパーマネントウェーブ(パーマ)です。パーマをかけた髪の毛は、この架橋構造を解いてやらない限り、形を記憶しています。

一方、皆さんが朝、起きた時に髪の毛がはねていることがよくあると思います。この寝癖のついた髪の毛は、タンパク質分子のペプチド結合の間の水素結合などに起因する分子間相互作用によるので、水をつけて水素結合を切ってやって、ヘアードライヤーで水をとばして乾かしてやれば、自然な形に整えることができます。

一方、パーマをかけた髪の毛は化学結合(共有結合)の架橋構造を含んでいるので、形状を記憶しています。形状を記憶しているからといって、この場合は形状記憶ポリマーとは呼びません(定義が違います)。しかし、形状を記憶していることに変わりはありません。そのため、橋架けした状態では任意に変形した状態を自然に保つことは困難です。

しかし、アミノ酸のシステインのSH基より還元力が高いチオグリコール酸アンモニウム(HSCH2COO-・NH4)のような還元剤を含んだパーマ液を用いると、シスチン残基の-S-S-結合を還元してSH基2つの状態に切り離してしまうことができます(Hを付加する反応も還元反応といいます)。つまり、シスチン残基がシステイン残基2つになって、タンパク質がほどけた状態になります。この状態で髪の毛を任意の形に固定して、もう一度過酸化水素水(H2O2を溶かした水)や臭素酸カリウム(KBrO3)水溶液などで酸化して-S-S-結合を形成させます(Hがとれる反応も酸化反応といいます)。そうすると、ウェーブがかかった状態で、還元前の組み合わせとは異なるシステイン残基同士で-S-S-結合が形成されます(再生と言うには同じ場所、同じ相手ではないので少し違和感がありますので形成としました)。

このようにして髪の毛は任意の形に固定されます。パーマをかけた髪の毛の中のタンパク質は橋架け構造(架橋構造)のおかげで立体構造的に安定しています。

パーマ液と熱を使うアイロンパーマという方法もあります。パーマ液、熱のいずれを使った場合も、-S-S-結合の組み替えが起こっていることに変わりはありません。



まとめ

結論として、寝癖の付いた髪の毛はケラチンのペプチド結合が関与した高分子間の水素結合による橋架けに起因し、パーマをかけた髪の毛はシスチン残基部分の-S-S-結合に起因します。水素結合は水分子によって切断できるので、髪の毛を水で濡らせば元の形状に戻すことができるし、わざと変形して乾かせばある程度形状を保持します。しかし、空気中の湿気で元に戻っていくでしょう。






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