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水の凝固点降下を利用して水道水でおいしい氷を作る方法

今日は凝固点降下から考えるおいしい氷だけとる方法について考えてみましょう。実際にやってみることはあまりないかもしれませんが、水の凝固点降下を理解していさえすれば、こんなことも理論上は可能ということです。

自分の家で水道水そのままで作った氷とコンビニで買って来た氷を比べると、買って来た氷の方がおいしいと思います(うちは天然水を使っているので氷もおいしいよとういう話はこの際なしで!)。理屈から考えればそうなります。いや、きっとそうだ(と信じたい)。

それでは、家ではおいしい氷は作れないでしょうか。答えは「作れます」。ただし、水を若干無駄にしますけど。

例えば、家で飲み会をやっていて、氷がなくなりました。これから氷を大急ぎで作ることにしました。冷凍庫に水道水を入れた製氷皿をいれました。もう凍ったかなと思って取り出してみると、まだ完全には凍っていません。そんな時、製氷皿の中がどのようになっているか注意深く観察してみると、各々の氷の端っこの方から凍っている、つまり、それぞれの氷の中央付近は凍っていないことに気づきます。この時、すでに凍った部分と凍ってない部分で、何かが違うでしょうか。

答えは「違いがあります」。

それでは、凍った部分と凍ってない部分では、どちらが水分子以外の不純物が多いでしょうか。

答えは後者です。氷の融点は0˚Cですが、0˚C以下の環境下では水分子がきっちり充塡されていって水の結晶、すなわち氷ができます。その時、不純物があれば、水の充塡を阻害するので、もっと温度が低下しないと水分子は結晶格子の中に組み込まれません。つまり、不純物を排除しながら水の結晶ができていくので、不純物(水以外の分子やイオン)が存在すると水の凝固点(融点)が低下するのです。ということは、まだ凍っていないところは凝固点が低くなっているからまだ凍っていないと考えることができます。

ということは、まだ凍っていない部分を別の容器に移して凍った部分だけを取り出せば、水道の蛇口から汲んだ水でできた氷の中では最も純粋なものができていることになります(純水だからおいしいとは限らないだろ!というツッコミはここでは無しということで・・・)。水の中で水の再結晶を行ったと言い換えることもできます。

ちなみに水のモル凝固点降下定数は1.86˚Cです。この定数の意味は、水1000g(1kg)に1モルの分子またはイオンを溶解した時の凝固点降下度を示しています。つまり純粋な水の凝固点0˚Cから1.86˚C低下した温度、氷点下のマイナス1.86˚Cがその水溶液の凝固点ということになるわけです。

これは束一的性質という名称で一括りされるいくつかある現象の一つです。ほかには浸透圧、沸点上昇、蒸気圧降下があります。これらの計算は希薄溶液で成り立つのですが、濃くても式に乗らないだけでその現象は起こります。つまり、変化の方向性は同じです。例えばみそ汁の沸点は真水の沸点より高いのは沸点上昇という性質によります。プールに服のまま飛び込んだ場合と、海に飛び込んだ場合で服の乾き方を比較すると、海水の方が乾きにくいのは蒸気圧降下という性質で説明できます。塩分を摂り過ぎると血圧が上がるのは浸透圧が関係しています。

凝固点に戻ります。

例えば、イオンにならないグルコース分子の分子量は180(モル質量は180 g/mol)です。グルコース180 gを水1 kgに溶解したら、その溶液の凝固点は理論的には−1.86 ˚Cとなるわけです。塩化ナトリウム(食塩)の場合は、式量が58.5ですので、58.5 gを水1 kgに溶解した場合、凝固点は−1.86 ˚C×2=−3.72 ˚Cとなります。NaClが1モルだから−1.86 ˚Cではないのですか?となりそうですが、グルコースは非電解質だから1モルは水に溶けても1モルですが、NaClの場合は水中でNa+とCl-に電離するから2倍の物質量(モル数)になるわけです。束一的性質ですから、分子やイオンの種類ではなく、数(数はモル数に比例)に依存するわけです。だから溶媒が水だったら溶質n種類に関係なく水のモル凝固点降下定数1.86を使います。

氷をつ作っている会社はこの方法を用いているはずです。凍らなかった水はもう一度混ぜて使っていたかもしれません。


まとめ

夏休みの自由研究で味を比べてみてはいかがでしょうか。






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