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プロパンガスが完全燃焼する時に必要な空気の量はどのくらい?

気体が燃えるときに、どのくらいの酸素、ひいては空気の量が必要かを考えてみましょう。 例としてエタン(C2H6)が燃焼して二酸化炭素CO2と水H2Oが生成する化学変化の反応式について、係数a, b, c, dが最も簡単な整数比になるように完成させるプロセスについて見てみます。

ものが燃えるということは、酸素と化合するということです。私たちに身近な存在のプロパンガスC3H8が燃えるときは、完全燃焼して二酸化炭素CO2と水H2Oができます。不完全燃焼すると一酸化炭素COと水H2Oができることになります。でも、できる個数がそれぞれの可燃物で異なるので、未定係数法で燃焼の化学反応式の係数を求めてみましょう。次のa, b, c, dを求めることになります。
 aC2H6 + bO2 → cCO2 + dH2O (エタンの燃焼反応)
まず、両辺における原子の数が等しいことを用いて、すべての元素について式を書き出します。
 C原子:2a = c
 H原子:6a = 2d
 O原子:2b = 2cd
ここで、ある1つの未知数を使って残りすべての未知数を表す(未知数4つにもかかわらず3つしかない連立方程式を解く)ことになります。例えば、b, c, daで表すと、
 c = 2a
 d = 3a
 b = (2cd)/2 = (2×2a+3a)/2 = 7a/2
これらを元の式にあてはめると、
 aC2H6 + (7/2)aO2 → 2aCO2 + 3aH2O
a = 1とおくと(またはa ≠ 0なので両辺をaで割ると)、
 C2H6 + (7/2)O2 → 2CO2 + 3H2O
ここで、O2の係数は分数になっているので、分数の分母を払って整数にすると、
 2C2H6 + 7O2 → 4CO2 + 6H2O
最後に、左辺と右辺の各元素の原子の数が一致しているかチェックすると、Cは4個、Hは12個、Oは14個となり、一致していることが確認できます。これで反応式は完成です。エタン2molが7molの酸素分子と反応して、4molの二酸化炭素と6molの水が生成することを表しています。 したがって、1 molのエタンが燃焼するためには7/2 mol = 3.5 molの酸素が必要であることがわかります。空気中の酸素の割合が約20%なのでエタンと空気の体積比は1:17.5となります。これを標準状態における体積に換算すると、1 molのエタン22.4リットルに対して、酸素O2は78.4リットル、その酸素O2を含む空気は392リットルとなります。物質量(mol数)と体積は比例するからです。したがって、エタンが完全燃焼するときの空気中のエタンの濃度は 1/(1+17.5) × 100 = 5.4 vol% となります。22.4/(22.4+392) × 100 = 5.4 vol%でもよいです。

今度は、メタンの燃焼反応で考えてみましょう。先ほどの未定係数法でメタン(CH4)が燃焼する時の化学反応式をつくると、次のようになります。
 CH2 + 2O2 → CO2 + 2H2O
したがって、1 molのメタンが燃焼するためには2 molの酸素が必要であることがわかります。空気中の酸素の割合が約20%なのでメタンと空気の体積比は1:10となります。したがって、メタンが完全燃焼するときの空気中の濃度は 1/(1+10) × 100 = 9vol% となります。

このような考え方で、プロパンガスの完全燃焼の式を作ると、次のようになります。
 C3H8 + 5O2 → 3CO2 + 4H2O
この式から、1 molのプロパンが燃焼するためには5 molの酸素が必要であることがわかります。空気中の酸素の割合が約20%なのでプロパンと空気の体積比は1:25となります。したがって、プロパンが完全燃焼するときの空気中の濃度は 1/(1+25) × 100 = 3.8vol% となります。実際のプロパンの燃焼範囲は2.1%~9.5%の範囲です。3.8%はこの範囲に入っています。例えば燃焼範囲の上限値9.5%では、一酸化炭素COも出てくるでしょうね。完全燃焼するには酸素O2が足りないわけですから。

次に、石油を容器/室内に密閉した場合を考えてみましょう。今、石油が炭化水素((CH2)n)からなると仮定すると、その構成単位(CH2) の燃焼は次のように書けます。
 (CH2) + (3/2)O2 → CO2 + H2O
したがって、(CH2) 1 molを燃焼するのに1.5 molの酸素が必要であり、酸素は空気中の1/5であることを考えると、石油14 g(CH2=14より、CH2 1モル)を燃焼するのに必要な空気の体積は標準状態(0 ˚C, 1013 hPa)で22.4 L × 1.5 × 5 = 168 Lとなります。これは、浴槽ほどの大きさの容器にスプーンで数滴の石油を入れたほどの状態に対応しています。逆に、浴槽ほどの容器になみなみと石油を湛えていると一見危険そうです(そんなことは現実的にはありえないだろうとツッコミが入りそうですが、あくまでも仮の話です)。その中の石油を燃焼させるには閉め切った浴室では酸素が圧倒的に足りず燃焼の三要素(可燃物(可燃性物質)、酸素供給源(支燃物)、点火源)を満たさないことになります。

このように、身の回りには一見イメージと違う現象が潜んでいます。上記の未定係数法を使って、代表的な飽和炭化水素(アルカン)CnH2n+2(n = 1, 2, 3, 4, ・・・)の燃焼の反応式を作ってみると、同じ物質量1モル(6.02×1023個)を燃やす場合にメタンガス(n = 1)<ガソリン(n = 8)<灯油(n = 12)<ロウソク(n = 20)の順に酸素O2がたくさん必要になることがわかります。式を作って検証してみると下記のようになります。
 CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O
 C2H6 + (7/2)O2 → 2CO2 + 3H2O
 C3H8 + 5O2 → 3CO2 + 4H2O
 C8H18 + (25/2)O2 → 8CO2 + 9H2O
 C12H26 + (37/2)O2 → 12CO2 + 13H2O
 C20H42 + (61/2)O2 → 20CO2 + 21H2O

だからロウソクを燃やすと、酸素が不足がちになるので、ススが出るわけです。それで、プロパンガス燃焼時のような青い炎ではなく、オレンジ色の炎になるわけですね。


まとめ

結論として、未定係数法を用いれば、燃焼反応に限らず、いろいろな化学反応式の係数を決定することができます。ただし、ゼロから化学反応式を作る時は生成物が何になるかは考えて作るわけではなく、この反応物ではこの生成物ができるという予備知識が必要です。それらが与えてある場合は未定係数法で簡単に係数を決定できます。






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