泥の中から助け出され九死に一生を得た強運を“持っている”3匹の赤ちゃんスッポン

↑上のアイキャッチ画像は2022年8月3日の夕方に水のなくなった用水路でスッポンの足跡が消えたところをその辺りに生えていた背の高い草の茎で掘ってみたら泥塗れで出てきた赤ちゃんスッポン。(2022年8月3日17:53撮影)

2021年と2022年に保護した赤ちゃんスッポンの個別データはこちら →

水のない用水路の底の泥についた赤ちゃんスッポンの足跡(2022年8月3日)

近所の水田が2022年7月26日から中干しの期間に入り、用水路の水位が下げられて水がなくなってきました。そして2022年8月3日朝にはほぼ水溜りもなくなりました。私はここ数年、水がなくなるまでの間に逃げ場を失ってそこに濃縮されてくる小魚たち(メダカ、フナ、オイカワ、ミナミヌマエビなど)を網で掬って100メートル先の用水路の本流まで運んでリリースする作業をしています。2022年8月上旬もそれを終えました。もう水がなくなってそこに生き物はほとんどいないのではないかと思っていました。

用水路の水溜りから救出したメダカなどの小魚
水溜りにいた最後の魚たちを100メートル先の用水路の本流まで運んでリリース。この1杯で魚の救出作業は終了しました。もう水溜りはありませんし、そこに魚はいません。ポリバケツの中には水面にメダカが確認できます。下の方には小さいフナやエビが多数いますが、写真では確認できません。(2022年8月3日8:47撮影)

その日の夕方にいつものウォーキングで用水路のところを通り、ふと見てみると、用水路のコンクリートの底に堆積した泥の上に、赤ちゃんスッポンの足跡がついていました。

赤ちゃんスッポンの歩いた跡
水がなくなった用水路の底の泥の上についた赤ちゃんスッポンの歩いた跡。(2022年8月3日17:51撮影)

赤ちゃんスッポンの歩いた跡
足跡の部分を拡大しました。(2022年8月3日17:51撮影)

赤ちゃんスッポンの歩いた跡
1〜2メートルしか離れていない別の場所の赤ちゃんスッポンの足跡。足跡が逆三角形の穴が空いたところで消えていることがわかります。(2022年8月3日17:51撮影)

赤ちゃんスッポンの歩いた跡
足跡の部分を拡大しました。赤ちゃんスッポンの背甲の頂上がこの泥の穴の二等辺三角形のいちばん大きい角度の頂点ではないかと閃きました。(2022年8月3日17:51撮影)

朝の魚の救出作業の時点ではそれはありませんでした。赤ちゃんスッポンがまだ水溜りがある時に水の中で泥に潜って隠れていたようです。そして水がなくなって干上がると泥から出てきて歩き出したようです。しかしその足跡は途中で消えていました。近くにタヌキの足跡が多数ついていました。昼前まではなかったので、午後に水がなくなってから獲物を漁りに来たようです。

タヌキのものと思われる足跡
タヌキのものと思われる足跡。昼前まではありませんでした。午後に水がなくなった頃に獲物を漁りに来たようです。(2022年8月3日17:51撮影)

赤ちゃんスッポンの足跡が途切れたところを掘ってみたら動く泥の塊が出てきました!(2022年8月3日)

赤ちゃんスッポンはすでにそのタヌキに食べられてしまったのかと思いましたが、よく見ると赤ちゃんスッポンの足跡がついている場所まではタヌキは来ていないように見えました。私は直感的に赤ちゃんスッポンはまだその場所に潜っているかもしれないと思いました。そこで近くに生えていた背の高い草の茎を使って用水路の側壁の上から底の泥を掘ってみました。すると、予想は当たっていました。赤ちゃんスッポンが泥塗れで掘り起こされました。

泥だらけの赤ちゃんスッポン
1枚前の写真を撮影した場所とは反対側の岸に移動して撮影した写真。スッポンの足跡が終わっているところの三角形の穴を草の茎で掘ってみました。すると泥だらけの赤ちゃんスッポンがひっくり返ったまま手足を動かしていました。右側の棒はその辺りに生えていた背の高い草の茎。私はその棒で写真の下の方(私がいる岸の方)にスッポンを動かして、手が届くところまで近づけました。(2022年8月3日17:53撮影)

泥だらけの赤ちゃんスッポン
泥だらけの赤ちゃんスッポンの部分を拡大しました。すぐそばには大きいエンマコオロギがひっくり返って死んでいます。熱中症アラートも出ていた日です。日中の日照りの過酷さがわかります。明日の午前中にはこの赤ちゃんスッポンも乾燥してしまっていたことでしょう。(2022年8月3日17:53撮影)

泥だらけの赤ちゃんスッポン
もう少し中央付近(写真の上の方)を撮影しました。(2022年8月3日17:54撮影)

近所の公園で1匹目の赤ちゃんスッポンを洗浄(2022年8月3日)

泥の塊みたいなのが出てきて動いていたので、まだ生きている赤ちゃんスッポンであることがすぐわかりました。私は近くの公園まで行き、水道でその赤ちゃんスッポンを洗いました。

泥だらけの赤ちゃんスッポン
手のひらの上の泥だらけの赤ちゃんスッポン。鼻の穴があるのがわかります。(2022年8月3日18:01撮影)

泥だらけの赤ちゃんスッポン
水道水で洗いました。私の手の指の間にもぐってしまいました。(2022年8月3日18:02撮影)

赤ちゃんスッポンの顔
赤ちゃんスッポンの顔。(2022年8月3日18:02撮影)

赤ちゃんスッポンの腹甲
家に帰って玄関先で撮った赤ちゃんスッポンの腹甲。まだへその緒が新しいので生まれて間もない(生まれて0〜3日ぐらい)と思われます。甲長は2.7cm。(2022年8月3日18:07撮影)

もしかしたらまだいるかもしれないと思ってもう一度救出作業:2匹目と3匹目がいました!(2022年8月3日)

そして、急いで家に帰って水の中に入れてやりました。そこで気になったのは、他にも赤ちゃんスッポンの足跡があったことです。もしかしたらまだいるかもしれないということが頭をよぎりました。しかし、もう日没前です。でも、今このタイミングを逸したらもう日が暮れてしまうので夜には獣の餌食になることはほぼ確実です。運良く獣に見つからなくても、次に日には炎天下で地面が高温になり、泥が固まって赤ちゃんスッポンはそこで埋まったまま高温で固まって死んでしまうか、出てきても干からびて死んでしまうことは必定です。ということで、もう18時も回っていたけれども事情を妻に話し、もう一度その場所に農業用ポールの柄をを付けた昆虫採集用の網を持って行きました。そして赤ちゃんスッポンの足跡が終わっているところを掘ってみました。すると、赤ちゃんスッポンがさらに2匹別々の場所から泥だらけで出てきました。

泥だらけの赤ちゃんスッポンがいた場所
この写真の中央付近を掘ると泥だらけの赤ちゃんスッポンが1匹出てきました(赤ちゃんスッポンの保護を優先したので泥だらけの赤ちゃんスッポンの写真は撮影しませんでした)。左側にはいませんでした。この辺りの泥の中から出てきた2匹目で、一旦帰ってもう一度探しにきてから1匹目。(2022年8月3日18:20撮影)

泥だらけの赤ちゃんスッポンがいた場所
ここにも赤ちゃんスッポンが潜っているかもしれません。足跡の途切れているところに赤ちゃんスッポンの胴体の断面ぐらいの大きさの穴が空いているからです。(2022年8月3日18:20撮影)

泥だらけの赤ちゃんスッポンがいた場所
潜っているかもしれないと思った場所を少し拡大。足跡から行動を推察すると、この辺りをうろうろした後に、最終的にここに潜った可能性があります。(2022年8月3日18:20撮影)

泥だらけの赤ちゃんスッポンがいた場所
その場所をさらに拡大。赤ちゃんスッポンが潜った時にできたかもしれない穴が空いていることがわかります。ここを農業用ポールで掘ってみました。するとここからも1匹出てきました(泥だらけの赤ちゃんスッポンの写真は保護を優先したため撮っていません)。この辺りの泥の中から出てきた3匹目で、一旦帰ってもう一度探しにきてからは2匹目。(2022年8月3日18:20撮影)

泥だらけの赤ちゃんスッポンがいた場所
赤ちゃんスッポンが潜っていた場所の写真(赤ちゃんスッポンを掘り起こして網で保護した後の写真なので赤ちゃんスッポンは写っていません)。(2022年8月3日18:20撮影)

他にも探しましたがその時発見されたのは2匹だけでした。その2匹の赤ちゃんスッポンの泥を近くの公園の水道で洗い流して連れて帰りました。

泥の中から救出された赤ちゃんスッポン
泥だらけの赤ちゃんスッポン2匹を網に入れて公園に移動しました。(2022年8月3日18:26撮影)

泥の中から救出された赤ちゃんスッポン
公園の水道水で泥を落としました。(2022年8月3日18:28撮影)

泥の中から救出された赤ちゃんスッポン
家に帰って玄関先で撮った2匹目(出直し捜索で発見した1匹目)の赤ちゃんスッポンの腹甲。まだへその緒が新しいので生まれて間もない(生まれて0〜3日ぐらい)と思われます。甲長は2.6cm。(2022年8月3日18:34撮影)

泥の中から救出された赤ちゃんスッポン
家に帰って玄関先で撮った3匹目(出直し捜索で発見した2匹目)の赤ちゃんスッポンの腹甲。まだへその緒が新しいので生まれて間もない(生まれて0〜3日ぐらい)と思われます。甲長は2.7cm。(2022年8月3日18:35撮影)

まとめ

こうして獣に食べられる前に、そして干からびて死んでしまう前に救出された赤ちゃんスッポンが合計3匹になりました。1匹を救出してから、まだいるかもしれないと思って行動を起こしてよかったと思いました。これら3匹の赤ちゃんスッポンは九死に一生を得た形で救出された、強運を持った子たちです。助けてやれなかった子たちもきっといるでしょう。何かの縁があってこういう形で出会ったわけなので、3匹一緒に育てることにしました。この生と死が紙一重の状況で助け出された3匹は強運を“持っている”赤ちゃんスッポンといえます。私も少しだけでもいいから肖りたいと思いました。

人間の都合に翻弄される形で毎年用水路の小魚が難民となります。私はその救出作業をぎりぎりまで行なっていますが、今回初めて完全に水がなくなった後に泥の中から赤ちゃんスッポンを救出しました。救出した8月3日の次の日も熱中症アラートが出るようなとても暑い日でした。もし3匹の赤ちゃんスッポンがそのまま泥の中にいたらほぼ確実に干からびて死んでいたでしょう。あるいは前夜(8月3日の夕方〜8月4日未明)のうちにタヌキなどの獣にやられていたでしょう。もし生きていたとしてもその次の日(8月5日)の午前中のうちに干からびていたでしょう。8月3日の夕方のウォーキング時に掘り起こしてみて本当に良かったと思いました。3匹は命拾いしました。

泥の中から救出された日から16日経過した8月19日現在の3匹の甲長(2022年8月19日)

泥の中から救出された赤ちゃんスッポンの16日後
泥の中から救出された日から16日経過した8月19日現在、3匹は元気に育っています。甲長は保護順に3.3cm、3.1cm、3.2cmで、半月で6mm、5mm、5mm成長しました。ダメ元で掘ってみて本当に良かったと思います。この子たちには命を繋いで欲しいと思います。その間は命を預かります。(2022年8月19日12:47撮影)

水のない用水路の泥の中から救出された3匹の赤ちゃんスッポンの18日後(2022年8月21日)

泥の中から救出された赤ちゃんスッポンの18日後
泥の中から救出された日から18日後の8月21日の朝の3匹の赤ちゃんスッポン。(2022年8月21日7:15撮影)

泥だらけの赤ちゃんスッポン
18日前より5〜6mm大きくなりましたが、長軸方向の直径としての甲長以上に楕円形として見ると大きく見えます。(2022年8月21日7:29撮影)

水田の中干し期間に入って水位が下げられてしまったことにより水がなくなってしまった用水路で、泥の中から救出された3匹の赤ちゃんスッポンの18日後の様子を動画撮影しました。最初はへその緒がありました。つまり、生まれて0〜3日後には水がなくなってしまって、行き場所を失って泥の中に潜っていました。運よく夕方のウォーキング中に私に掘り起こされて発見・保護されました(私がその時に棒でつついて掘り起こしてみたこと自体が奇跡と言えます)。もし発見されなかったら、その日の夜に獣に食べられてしまうか、翌日の午前中には干からびて死んでしまうかもしれなかった(というよりほぼそのようになったであろう)大変な境遇に置かれていた子たちです。こうして生きているのは本当に奇跡とも言えます。他の兄弟たちはどうなったかわかりませんが、私が探した範囲ではいませんでした。保護された3匹の赤ちゃんスッポンは強運を持っていることは間違いないでしょう。保護当時の甲長は2.7cm、2.6cm、2.7cmでしたが、この半月ちょっとでそれぞれ0.5〜0.6cmぐらい伸びました。縁を感じて育てています。(2022年8月21日7:31撮影)(2022年8月21日公開)

水のない用水路の泥の中から救出された3匹の赤ちゃんスッポンの53日後(2022年9月25日)

泥の中から救出した赤ちゃんスッポンの53日後
53日前より甲長が1.6〜1.7cm成長した3匹の赤ちゃんスッポン。(2022年9月25日7:53撮影)

泥の中から救出した赤ちゃんスッポンの53日後
中央の1匹がいちばん人懐こいです。1匹引っ込みました。(2022年9月25日7:53撮影)

水のない用水路の泥の中から救出した3匹の赤ちゃんスッポンの53日後のガラス水槽内の様子を動画撮影しました。甲長は3匹とも現在4.3cmになっていました。救出当時の甲長は1匹目2.7cm、2匹目2.6cm、3匹目2.7cmだったので、53日で1.6cmから1.7cm成長しました。順調だと思います。助かってよかったと思います。(2022年9月25日7:55撮影)(2022年9月25日公開)

泥の中から救出した赤ちゃんスッポンの53日後
動画撮影後に撮った写真。3匹ともかなり慣れてくれています。命を救ってもらったというのはわかっているのでしょうか。これまで飼育してきたどの赤ちゃんスッポンよりかなり慣れています。(2022年9月25日7:55撮影)







関連記事

  1. 2019年に保護した3匹目の赤ちゃんスッポン

  2. 2匹目の子スッポンの飼育記録(2020年8月)

  3. 本当はもう1匹いた月齢2ヶ月の台湾生まれの赤ちゃんスッポン

  4. 2021年に観察した野生のスッポンの記録(33匹目〜38匹目)

  5. 大きいスッポンが小さいスッポンを襲う瞬間

  6. 川魚とスッポンを飼っている5つの水槽(5ヶ月目〜)

  1. 夕方のウォーキングによる体重と体調の管理(2024年4…

  2. 夕方のウォーキングによる体重と体調の管理(2024年3…

  3. 夕方のウォーキングによる体重と体調の管理(2024年2…

  4. ビリルビン(Bilirubin)のIUPAC名を自分なりに付け…

  5. 夕方のウォーキングによる体重と体調の管理(2024年1…

  1. 通算6匹目のすっぽんの目が新鮮な水道水で白濁してし…

  2. 観察した近所の公園のチョウトンボの観察(2022年〜2…

  3. 激しい喧嘩のあとに皮膚病になっていた2020年に観察…

  4. 2020年に観察した5匹目と6匹目の野生のスッポン

  5. 図鑑で見つけることができていなかった珍しい小鳥は…

  1. 減量におけるウォーキングの効果の検討(2021年4月)

  2. 激しい喧嘩のあとに皮膚病になっていた2020年に観察…

  3. 2020年に観察した5匹目と6匹目の野生のスッポン

  4. 40分以上喧嘩していた2020年に観察した3匹目と4匹目…

  5. ウグイスが気を失ったあとに回復していく過程の観察

アーカイブ

カテゴリー