レコードのプレス過程で私が疑問に思ったこと

こんにちは。熊の実です。

アナログレコードの需要が増えているといいます。私は1985年頃に揃えたオーディオをまだ使っています。レコードは輸入盤を集めるのが趣味です。ですので、レコードの音には関心があります。

最近、レコードのプレスの方法に興味があって調べてみたところ、化学を専門とする私からみて不思議な操作や理解できないことがあったので、記事にしてみました。

「レコード 作り方」とググると、1位と3位にYouTube動画が出てきます。それらを見ていて、理解できなかったことを書いてみます。

検索順位1位の方の動画とその下の説明文の矛盾点

検索順位1位の方の動画は動画2つの下に大まかな説明文があります。引用させていただきます。

1. 音を原盤「ラッカー」(lacquer)にカッティング。これは表面が柔らかい原版に凹型の溝を切る工程。
2. 「ラッカー」そのままでは耐久性に乏しいので、表面に銀メッキを施しその上に更にニッケルメッキを、厚く施した上で剥離する。こうして出来た凸型の金属盤が「メタルマスタ」(metal master)で、これが保存用のマスターディスクになる。
3. 「メタルマスタ」に銅メッキを施し、剥がすと凹型の「マザー」(mother) ができる。これは生産用のマスターディスクになる。
4. 「マザー」にニッケルやクロムで更にメッキを施し剥がし、凸型の「スタンパ」(stamper) を作る。
5. 「スタンパ」を用いて上記のプレスを行うことでレコード(凹型の溝)が完成する。スタンパは消耗品で、使い潰したら「マザー」からまた新しいスタンパを作る。ここで4.の工程が行なわれる。
プレスしたそのままではビニライトがはみ出しており円形ではないので周囲を裁断、整形する。

枠内は原文のコピペです。

上記の2.の操作までは特に疑問に思いません。しかし、3.の操作で銅メッキを施した後に銀とニッケルのメタルマスタを剥がすことができるのか疑問です。金属は混ざってしまってうまく剥がれないと思います。仮に百歩譲って剥がれたとしても、もはやその時点で原盤の信号はintactではないと思います。また、4.の操作のところで、銅メッキで作ったマザーにニッケルやクロムでさらにメッキを施して、銅メッキで作ったマザーから剥がすことができるのか不思議です。きれいに相分離したとしても原音を忠実に再現できるとは思えません。仮に剥がれたとしても、さらに音は劣化していると思います。ですので、私には3.と4.の操作が必要だという意味がわかりません。3.と4.の操作はとばして5.に行かないのはなぜでしょう。これでオリジナルの音源を忠実に再現するのは無理では?

もしかしたら動画の誤訳ではないのでしょうか。

2.で作ったメタルマスタをスタンパーにしてポリ塩化ビニルのペレットを高温でプレスすれば済むことだと思います。つまり、3.と4.の操作なしで5.に行くのです。

実際に、そのページにあった英語の動画を見てみると2.で作ったものをスタンパーと言っているように思います。3.と4.の操作はないです。皆さんもよかったら確認してみてください。

もう一つのサイトの動画の手順で理解できないところ

また、検索結果の3番目に表示されたサイトの動画では、大まかな流れは下記のようになっています。

1. 音源をもとにプラスティックのディスクに溝を掘る。これがラッカーマスター盤。A面B面2枚作成。
2. 顕微鏡で溝をチェック。これで原盤作成できた。
3. 原盤に銀を化学メッキ。そのあと電気化学的にニッケルをメッキ、そして、さらにニッケルをメッキして0.3mm厚にする。
4. 剥がす。剥がしたものの表面に銀がある。この銀の単体はポリ塩化ビニルのペレットをプレスする時に発生するガス※に弱いため、薬品で取り去る。(※ポリ塩化ビニルを高温でプレスするためにHClが発生してAgがAgClになるためと私は思います)。
5. その次にクロムをメッキして表面を保護する。

しかし、ここで疑問が生じます。せっかく原盤(ラッカー盤)を忠実に写し取ったのに、なぜ、その銀を取り除くのでしょうか。これでは原音を忠実に反映していません。intactでなくなります。
さらに難解なのは、銀を取り除いた後にクロムをメッキして表面を保護することです。こうして作ったものがスタンパーとして使われるのはちょっと理解に苦しみます。もしこれが本当だとすれば、日本で作ったレコードは音が悪いとか、音が違うとかいわれるのは当然かと。
あとはフォーミング加工とか、中心を決めたり、穴をあけたりという工程がありましたが、あまり関係ないので省略します。

英語のナレーションの動画を見てまとめた手順

私が検索順位1位の方の動画の2つ目を見てまとめた手順の概要は下記の通りです。

1. 音源をもとにプラスティックのディスクに溝を掘る。これがラッカーマスター盤。
2. A面B面2枚作って、顕微鏡で溝をチェック。これで原盤が作成できた。
3. 原盤の上にAgメッキ。この時、Tin chloride (SnCl4)が増感剤(sensitizer)、つまり還元剤で、 銀イオンの水溶液(Silver liquid)中のAg+をAg(銀の単体)に還元する。それによってものの数秒(in seconds)でラッカーマスター盤の表面にAgメッキができる。
4. くっつかなかった(stickしなかった)余ったAgを洗い流す。そして、その上から電気化学的にニッケルNiをメッキする。そして、さらにニッケルをメッキする。これで剥がせる厚さになっている。これを剥がしたのがスタンパー。ラッカーマスター盤はdiscardされる。
5. poly(vinyl chloride)を190℃でプレスしてレコードを作っていく。20秒で1枚のペース。

以下省略。

いかがでしょうか。とてもシンプルで理にかなっている工程だと思います。

まとめ

というわけで、間違っているのか、本当にそういう操作なのかわかりませんが、化学を専門とする私が疑問に思ったことを書かせていただきました。また、化学を抜きにしても、原音を忠実に写し取るのに無駄と思われる操作、理解に苦しむ操作を指摘させていただきました。

それでは、また。







関連記事

  1. カルチャー・クラブのLPレコードは2枚だけ持っていました

  2. 洋楽に関する青春時代の回想録

  3. ジョン・レノンの追悼曲の中で最も感動的なHere Today

  4. ELPのLPレコード「展覧会の絵」

  5. 私のお気に入りのポリスとスティングの曲

  6. 私がよく聴いたエリック・クラプトンの曲

  1. 2020年に用水路で保護した1匹目の赤ちゃんスッポン

    2020.09.18

  2. 観察開始から53日目以降のミシシッピアカミミガメ

    2020.09.14

  3. 2匹目の子スッポンの飼育記録(2020年9月)

    2020.09.11

  4. ナミアゲハの幼虫の蛹化と羽化

    2020.09.08

  5. 減量におけるウォーキングの効果の検討(2020年9月)

    2020.09.02

  1. 激しい喧嘩のあとに皮膚病になっていた2020年に観察した3匹目のスッ…

    2020.05.05

  2. 2020年に観察した5匹目と6匹目の野生のスッポン

    2020.04.29

  3. 図鑑で見つけることができていない珍しい小鳥

    2020.04.16

  4. 用水路の浅瀬にいた図鑑で見つけることができていない珍しい水鳥

    2019.12.18

  5. 卵から生まれた7匹の赤ちゃんスッポン

    2019.11.17

  1. 激しい喧嘩のあとに皮膚病になっていた2020年に観察した3匹目のスッ…

    2020.05.05

  2. 2020年に観察した5匹目と6匹目の野生のスッポン

    2020.04.29

  3. 40分以上喧嘩していた2020年に観察した3匹目と4匹目の野生のスッポン

    2020.04.12

  4. ウグイスが気を失ったあとに回復していく過程の観察

    2019.12.14

  5. 西郷どん第17回で出てきた鹿児島弁の解説

    2018.05.07

アーカイブ

カテゴリー