大きな柿の接ぎ木
Grafting persimmon branch.
成功確率(私の方法) | ★☆☆☆☆ |
接ぎ木はよく、3〜4月や、8月下旬に行うと言われていますが、11月に接ぐ例はあまり聞いたことがありません。なぜこんな時期に?ということになりますが、実は、子供の頃からずっとある柿の木にとても大きな柿が生るのですが、その柿を高枝ばさみで収穫した時の枝がもったいないと思ったからです。この柿は不完全甘柿のようですが、大きいものは400g近くになりますので、希少価値があると思うのです。この柿を食べるには、収穫後軟らかくなるまで放置しなければ渋いところがあって食べられません。干し柿にはしません。その柿は今日みかける柿では百匁柿にそっくりですが、よくわかりません。
それでは、以下にその過程を紹介します。
11月8日(土)に最後の3個を脚立と高枝ばさみで慎重に収穫しました。道路脇に植えてあるので地面はアスファルトです。そこに落ちたらひとたまりもありません。収穫した柿3個の写真を次に示します。
高枝ばさみで収穫した最後の3個の大きな柿。
(2014年11月8日)
その中でも特に大きな1個(右)。
枝がもったいないので接ぎ木に使ってみました。
(2014年11月8日)
ちなみに、その一番大きいやつを食べてみました。中央付近にはゴマがたくさん入っていますが、硬いうちに食べるとへたの付近が渋いことが多いです。この柿の木を接ぎ木したい!と思ったところ、ちょうどいい台木があります。それは富有柿を種から育てた柿の木です。実が甘くならないので、接ぎ木で役立ってくれれば十分です。
包丁で皮を剥くとこんな感じです。
軟らかくておいしそうです。
(2014年11月9日)
4分の1に切りました。最終的にはさらに半分(1/8)にして食べました。めちゃくちゃ甘いです。
(2014年11月9日)
全部で8本接ぎましたが、最初の方は下手くそでしたので、最後の3回分(6〜8回目)について紹介します。しかし、私が行なった方法はおそらく接ぎ木のプロが行う常法ではないので、笑わないでください。枝の有効利用と私個人の知的好奇心から行ったまでです(やってみないと新しい発見もありません)。成功率が8分の0でなければいいわけです。もちろん来年の本番に向けての練習も兼ねてです。本番は来年2015年の2月〜3月頃と考えています。
まず1つ目(6回目)です。
この枝を使いました。
(2014年11月9日)
鎌で鋭角に削りました。
(2014年11月9日)
台木の方は、脚立を使って高いところの枝を剪定ばさみで落とし、切り込みを剪定ばさみで入れました。
(2014年11月9日)
合わせるとこんな風になります。
(2014年11月9日)
1回巻いてきつく締め、それを3回繰り返し、接合面の範囲を締めました。そのあとグルグル巻きにしました。全体的にかなりきつく締めた感じです。
(2014年11月9日)
次に2つ目(7回目)です。1回目よりも鋭角にして削り面を長くとりました。
台木の方は、脚立を使って高いところの枝を落としました。1回目よりも鋭角にして削り面を長くとりました。
(2014年11月9日)
1回巻くごとにきつく縛り、接合面の範囲を4回ほど締めてから、全体をグルグル巻きにしました。
(2014年11月9日)
最後に3つ目(8回目)です。これは、三つ又の枝を使いました。普通は1本の穂木を使いますので、ある意味邪道ですが、どうなるか自分で試してみたいのです。
穂木は一番大きい柿についていた三つ又の枝を使いました。
(2014年11月9日)
こんな感じの鋭角に削りました。
(2014年11月9日)
角度を変えてみるとこんな感じです。
(2014年11月9日)
台木の方は、脚立を使って高い所の枝を落としました。
(2014年11月9日)
こんな感じで切り込みを入れました。
(2014年11月9日)
こんな感じで外します。
(2014年11月9日)
こんな感じの切れ込みになります。
(2014年11月9日)
穂木と台木がぴったり合いました。
(2014年11月9日)
1回目をきつく締めました。
(2014年11月9日)
3本のひも(1本約30cm)で3カ所締めました。
(2014年11月9日)
1回巻くごとにきつく締めることを繰り返しながら、最終的にグルグル巻きにしてこんな感じになりました。
(2014年11月9日)
8カ所に大きな柿の生る柿の木の枝を接ぎ木をしました。丸で囲んだ部分が6カ所です。
(写真左下に隠れている箇所が2カ所あります)。
(2014年11月9日)
以上でひとまず準備完了です。あとは、接ぎ木が成功するか待つだけです。寒くなってきた11月ですので、あまり生長しないので、どうでしょう。結果を楽しみにしたいと思います。失敗は成功のもととも言いますから。
2015年3月1日(日)、様子を見てみたのですが、萎びているように見えました。だめで元々のつもりでやってみたのですが、うまくいっていない可能性が大です。ちゃんとした時期にちゃんとした方法でやらないとだめだということですね。
2015年3月29日(日)現在、接ぎ木の箇所をチェックしてみました。8カ所のうち、2カ所は接いだ枝が生きていましたが、6カ所は枯れていました。捨てるのがもったいないということで真冬に行ったのですが、やっぱり、だめでした。そこで、活性の上がった今、新たに11カ所、接ぎ木を行いました。自己流が入っているのでうまくいくかどうかわかりませんが、11本少しづつ微妙にやりかたを変えてやってみました。どれがうまくいくか検討するためです。とはいっても、他の条件を同じにすることはできないので、厳密には系統的な検討にはなっていませんが、どれかがうまくいけばいいという考えです。趣味なので問題ないですね。
2015年5月2日(土)現在、接ぎ木の箇所をチェックしてみました。普通の枝には新しい葉っぱがたくさん出ていましたが、接いだ枝には出ていませんでした。明らかに枯れていました。ここで考察です。いくつか原因が考えられます(順不同):
(1) 皮に近い部分を切って穂木を挿入すべきところを、幹の中央付近を切り込んだことによって、形成層(黄色い部分)同士の接触がうまくいかなかったこと
(2) 穂木が長過ぎた
(3) 前処理と時期を誤った
(4) テープで固くない程度に固定すべきなのに、紐で固く固定した
これらを踏まえて来年もう一度チャレンジします。
一方で、この不完全甘柿の実生を育てています。甘柿ではないので、実生ではオリジナルの実は生らないでしょうか。とはいえ、接ぎ木の方が早いし、同じものを得るには確実な方法ですので、もう一度チャレンジします。
2015年11月に再挑戦
そして、2015年11月23日に4ヶ所接ぎ木をしてみました。穂木は何も前処理していなくて、剪定した枝を捨てるのがもったいないので穂木として接いでみます。1年前は形成層と形成層がうまく接触していなかったので、今度は台木の方の皮を薄く長く削って、接ぎ木する方の枝(穂木)との間で形成層(黄色い部分)同士がうまく接触するように意識しました。その結果、かなりの鋭角で差し込む形になりました(下の写真参照)。そして、ビニールの紐で縛りました(市販品は何も使わずにやっています)。
2ヶ月以上経った2月6日と7日に穂木の方の皮を爪でちょっと剥いでみたところ、緑色っぽい形成層が見えました。ということは、今のところまだ枯れていないようです。これから暖かくなってどうなるのか、まだ予断は許しませんが、もしこんな手抜きの方法でもうまくいくようであれば嬉しいです。
全部で4ヶ所、穂木を鋭角で差し込み、紐で縛って2ヶ月半経過。爪で傷をつけてみました。生きているような気がしますが・・。
(2016年2月6日)
全部で4ヶ所のうち、2ヶ所目。生きているような気がしますが・・。
(2016年2月7日)
全部で4ヶ所のうち、3ヶ所目。傷が見えにくいですが、まだ生きているようでした。
(2016年2月7日)
全部で4ヶ所のうち、4ヶ所目。これも生きているような気がします。
(2016年2月7日)
結果
接ぎ木はうまくいきませんでした。葉っぱがたくさん出て来る時期に、接いだ穂木からは葉っぱは出ていませんでした。やっぱり市販の「癒合剤」を使わないとだめでしょうか。今度やる時はこれまで上手く行かなかった知見をもとに、計画を立てようと思います。これまで失敗した結果を恥ずかしながら公開しているのは、この方法ではうまくいきませんでしたよということが、あなたにわかるからです。失敗例を参考にすればうまくいく方法を絞り込めると思うのです。実際、私自身もうまくいかない方法はわかってきましたので、次は何をすればいいか絞り込めてきました。このページをそのように利用していただければ少しだけ役に立てそうです。